Q.ヘアカラー剤の見本通りに染まらないのはなんで?

市販されているヘアカラー剤が見本通りに染まらない理由を一言でいうと、髪のもともと持っている色素と以前のカラーリングの影響が考えられます。

 

髪の色が決まる要素とは

「今回のヘアカラー剤」+「髪の色素」+「前回のヘアカラー剤」=「仕上がりの髪色」

 

髪の色は「今回のヘアカラー剤」と「髪の色素」と「前回のヘアカラー剤」が重なりあうことによって仕上がりの髪色になります。なので、人によって、またはその時の髪の毛の状態、履歴によって仕上がりが変わります。

 

ところが、見本は「同条件の毛に染めた時の仕上がり」を「イメージ」したものです。

つまり、メーカーが仮に定めた、全く染めたことがなく、髪の毛が元々持っている色素がキレイに色が抜けて、ヘアカラー剤の合成色素がきっちりと浸透、発色する髪の毛に使用した時の仕上がりが、見本のイメージなのです。

 

人や髪の毛の状態が違えば色の抜け具合もヘアカラー剤の浸透、発色具合も違います。

 

ということは、見本で見極められるのは、仕上がりのイメージというよりも、Aというヘアカラー剤とBというヘアカラー剤はこれくらいの違いです。という目安程度でしかありません。

 

ですので、見本通りには染まらない場合が多いのです。

 

「今回のヘアカラー剤」

まずは、ヘアカラー剤の着色方法から説明します。

 

色を付ける物には「顔料」と「染料」があります。

 

顔料とは、ポスターカラーや油絵具のようにキャンバスが何色であろうと厚く塗れば見たままの色で見えるようなものです。

〔塗る〕ものですね。

染料は、草木染や藍染を染めるように、色素の溶けた溶剤の中に、染めたい素材を入れ込み浸透させ発色させます。

〔染める〕ものです。

 

そして、一般的に売られているようなヘアカラー剤(酸化染毛剤と呼ばれるもの)は「染料」です。

※薬剤を「塗り」はしますが、実際には色素が浸透している「染め」の反応です。

 

なので、髪の毛のに合成色素が浸透します。これが「今回のヘアカラー剤」です。

 

「髪の色素」

もともと髪の毛が生えてくるときから中に入っている色素のことです。

髪の中には赤や黄色の色素(メラニン色素)があります。これらが濃く重なり合って黒く見えています。

そのメラニン色素の割合や量は人種や髪質により異なりますので、生まれつきの髪の毛の色は人それぞれになります。

 

カラーリングの仕組みとしては、まずヘアカラー剤に含まれる脱色剤でこのメラニンを分解して黒から茶色へと明るくし、それからヘアカラー剤に配合されている合成色素が発色することになります。

※この脱色剤の影響も、人によって、また状態によって抜け具合が異なります。

 

つまり、ヘアカラーで染めれらた髪の毛は、例えばヘアカラー剤の合成色素がないとしても、髪の毛の色自体が赤茶や黄色になっています。この赤茶や黄色の程度はメラニン色素の残り具合によって変わります。

 

これが、「髪の色素」です。

 

 

「前回のヘアカラー剤」

そして、一度ヘアカラーをした髪の毛には、少なくとも前回のヘアカラー剤の合成色素が残っています。

ずっと染めていない場合にはほとんど残っていないこともありますが、完全に0になることもあまりありません。

 

なので、今回希望のヘアカラー剤を使ったとしても、髪の色とは様々な色素が重なり合って見えているものなので、過去に染めたヘアカラー剤の色素が残っていた場合には、影響を与えることになります。

 

これが、「前回のヘアカラー剤」です。

 

ちなみに、「髪の色素」の段で書いた脱色剤では、このヘアカラー剤の合成色素を抜くことができません。

  

希望通りにそめるには

色には色調という要素があり、色同士が打ち消しあって濁ってしまう「補色」関係(黄色と紫など)、似ている色や(赤とピンクなど)、混ざることでその色になるもの(青と黄色で緑など)があります。

 

さらには明度、彩度という要素があります 

 

美容師は知識と経験値をもとに、ヘアカラー剤の特徴を認識し、こういった色同士の関係を考えつつ、調合を行っています。

 

そして、プロ用と市販のヘアカラー剤では色の配合傾向が異なりますので、市販の見本だけを見て、「この色にするにはこのヘアカラー剤!」と断言することは美容師であっても非常に困難です。

※市販のカラー剤で色々試している美容師もいるかもしれませんが。

 

 

さらに、 もし一度ご自分で染めて、気に入らなかったからと美容室で染めなおそうとしても、その染めた色が「前回のヘアカラー剤」として邪魔をしてしまうので、修正しきれない場合も出てきます。

 

その場合でも、できうる限りご希望にそったお色にしていきたいのですが、例えば赤みのあるカラーからアッシュ系の色味へのチェンジ、またはもともとの髪色で赤みのメラニンが多い方などは前述した色同士が打ち消し合う関係(補色)にありますので、一度のカラーリングできれいなアッシュ系にするのがなかなか難しくなっています。

 

美容室で染めましょう

ただし一度できれいに発色しなくても二度三度と同系の色味を重ねていくことで、髪の中にその色味の色素が多く存在するようになり、徐々にご希望の色に持っていくことができます。

 

お客様のもともとの髪質やその時点での色素の残留具合にもより、発色の具合は異なってきますので、ぜひじっくりと美容師と相談してみてください。

 

※セルフカラーを行う場合にはくれぐれもご注意ください。

 

 

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